ビンテージTシャツの”ボディ”として圧倒的な人気を誇るフルーツ・オブ・ザ・ルーム(Fruit of the Loom)。主に1980年代のTシャツに多く見られる紙タグから1990年代前半までに作られたヴィンテージTシャツの多くがアメリカで製造されていた時代まで、タグの変遷を追うことで正確な年代が判別できます。
今回は古着屋のバイヤーが実際に使っているプロの識別テクニックを大公開。これを読めば、古着屋で掘り出し物を見つけられるようになります。
なぜフルーツ・オブ・ザ・ルームなのか?ボディブランドとしての価値
フルーツ・オブ・ザ・ルームは100年以上の歴史を持つアメリカの老舗ブランドで、主に下着や靴下の製造で知られています。しかし古着界では“ボディブランド”の代表格として絶大な人気を誇ります。
グラフィックTシャツ黄金期の立役者
1970年代から1990年代にかけて、グラフィックTシャツが非常に人気を博した時代、フルーツ・オブ・ザ・ルームはTシャツにプリントを施す業者に、高品質な無地のTシャツ(ブランクTシャツ)を供給していました。
つまり、現在高値で取引されている多くの有名バンドTシャツやヴィンテージプリントTシャツのボディ(土台となる無地Tシャツ)がフルーツ・オブ・ザ・ルーム製なのです。
【実践編】タグで読み解く年代別識別法
年代判別においてまず見るべきはタグ!タグさえ残っていれば、年代判別はかなり容易なものになります。プロのバイヤーが教える実践的な識別方法をご紹介します。
50’s:サンフォライズド表記が重要な手がかり

主な識別ポイント:
- 「Sanforized(サンフォライズド)」の表記
- クラシックなフルーツ・オブ・ザ・ルームロゴ
💡 軟式古着部解説
サンフォライズドとは「防縮加工済み」という意味。洗濯しても縮みにくい特殊加工のことです。この表記があると1950年代の可能性が高くなります。
バイヤーの判別コツ:
サンフォライズド表記は1950年代によく見られる特徴的な表記です。ただし年代特定には、他の要素との組み合わせで判断することが重要。
60’s:青枠デザインが決定的な特徴
※写真準備中
決定的な識別ポイント:
- 青枠で囲まれたタグデザイン
- 「FRUIT OF THE LOOM」の文字が青色
- フルーツのイラストが非常にリアルな描写
- りんごのサイズが現在より大きい
識別のコツ:
60年代は青枠が最大の特徴。この青い枠線があれば60年代の可能性が非常に高くなります。フルーツの描写も絵画的で非常にリアルなのが特徴的。
↓こちらは60年代後半~70年代前半のタグと推察されます。

70’s:青枠の消失と文字色の変化

主な変化ポイント:
- 青枠が消失(60年代との大きな違い)
- 「FRUIT OF THE LOOM」の文字が黒色に変更
- ブランド名がタグ下部に移動
- 字体が丸みを帯びたより親しみやすいデザインに
プロの見分け方:
70年代は60年代からの大きな変化点。青枠がなくなり、文字が黒色になるのが決定的な判別ポイント。フルーツのイラストはリアルな絵画スタイルを継続。
80’s後半:洗練されたスタイリッシュデザイン

重要な変化:
- 洗練されたオシャレな字体が特徴
- 「FRUIT OF THE LOOM」の文字がスタイリッシュに
- フルーツのイラストがアニメ風のポップなテイストに変化
- 中央にフルーツ、下部に小さく「MADE IN U.S.A.」表記
- Screen Stars(スクリーン・スターズ)サブブランドの登場
- 薄くてぺらっとした紙のような素材で作られている紙タグは、主に1980年代のTシャツに多く見られます
識別の決め手:
80年代はグラフィックTシャツの黄金期。フルーツのイラストがリアルからポップなアニメ調に変化するのが大きな特徴。「スクリーン・スターズ」タグも多く見られます。
90’s前半:Made in USA最後の時代


見逃せない特徴:
- 1989年にスクリーン・スターズ終了
- 「Made in USA」表記
- 「100% Cotton」表記
- 新デザインのタグ導入
コレクター価値:
1990年代前半までに作られたヴィンテージTシャツの多くがアメリカで製造されています。この時期はアメリカ製最後の時代として、「Made in USA」表記が重要な価値判断基準になります。
90’s中期~後期:製造国の多様化と2枚タグの登場


大きな変化:
- 「Made in USA」表記の減少
- メキシコやカナダ製の登場
- 2枚タグが主流に(1枚目:フルーツイラスト、2枚目:品質表示)
- タグデザインの多様化
時代背景:
90年代中期~後半は製造のグローバル化が進み、アメリカ国外での生産が本格化。2枚タグシステムの導入で、より詳細な品質情報が記載されるように。
その他のタグ判別方法
ブラックタグ(1993-1996年):短期間限定の希少品

レア度:★★★★★
- 黒いタグが最大の特徴
- スクリーン・スターズの DNA を継承
- 50/50コットン・ポリエステルブレンド
- シングルステッチ仕様
なぜレアなのか:
わずか3年間という短期間しか使用されなかったため、市場に出回る数が限定的。50/50は、1980年代から90年代のプリントTシャツに多くみられる特徴のひとつという時代背景も価値を高めています。
ホワイトタグ(90年代中期〜後期):時代の転換点

時代背景:
- 白地のタグデザイン
- NAFTA以降の海外製造移転を反映
- 「Made in USA」表記の消失
コレクターの視点:
アメリカ製造業の海外移転という歴史的転換点を示すタグ。ビンテージ収集家にとって重要な境界線となります。
ヘビーコットンタグ(90年代中期~00年代初頭):品質への回帰


品質特徴:
- 100%コットン素材
- 厚手の生地採用
- シングル・ダブルステッチ両方存在
- 製造国により仕様変化
【プロ技】タグなしの場合の判別テクニック
Tシャツのタグが取れてしまっている場合でも、以下の方法で年代を推測できます。
ディテールによる年代特定
1. 著作権表記の活用
Tシャツのデザインに記載された著作権年(©)は、製造年を特定する最も確実な手がかりです。
2. ツアー日程の確認
バンドTシャツの場合、ツアー日程が記載されていることが多く、これも年代特定に有効です。
3. ステッチの種類で判別
- 1960年代までは足踏み式ミシンが一般的で、職人の手による技術が反映された不均一で独特の風合いが特徴
- シングルステッチ:1990年代前半まで
- ダブルステッチ:1990年代後半以降
4. 生地の質感
年代によって使用される綿の質や織り方に違いがあります。古いものほど生地に重厚感があることが多いです。
古着屋での実践的な使い方
掘り出し物を見つけるチェックポイント
- まずはタグの枠線を確認 → 青枠があれば60年代の可能性大
- 文字の色をチェック → 青文字なら60年代、黒文字なら70年代以降
- フルーツイラストの描写 → リアルなら70年代まで、ポップなら80年代
- スクリーン・スターズタグ → 80年代の貴重な一枚
- Made in USA + 100% Cotton → 90年代前半の良品
- 2枚タグ仕様 → 90年代後半以降
- ブラックタグ発見 → レアアイテムの可能性大
- シングルステッチ確認 → ビンテージ度の高さを証明
価格交渉の材料にも
正確な年代判別ができれば、古着屋での価格交渉にも活用できます。特に50年代のサンフォライズドタグや90年代前半のブラックタグは、その希少性を根拠に適正価格を判断できます。
まとめ:フルーツ・オブ・ザ・ルーム識別の要点
絶対に覚えておきたいポイント
✅ 青枠 + 青文字 → 60年代の特徴
✅ 青枠なし + 黒文字 → 70年代の特徴
✅ ポップなフルーツイラスト → 80年代の特徴
✅ スクリーン・スターズタグ → 80年代の証
✅ Made in USA + 100% Cotton → 90年代前半
✅ 2枚タグ仕様 → 90年代後半以降
✅ ブラックタグ → 1993-1996年(超レア)
✅ シングルステッチ → 90年代前半まで
フルーツ・オブ・ザ・ルームのタグ識別をマスターすることで、ビンテージTシャツの真の価値を見極められるようになります。生まれたであろう年代、国などのバックグラウンドを意識、想像することでよりその1着を深く知ることができ、さまざまな角度で楽しめるようになります。
次回の古着屋巡りでは、ぜひこの識別法を実践してみてください。きっと今まで見過ごしていた掘り出し物に出会えるはずです。

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